現在進化の過程にある複眼系アーティスト、中島沙織。デザインを勉強していた作家が書きためていたアイデアノートには、日々のたわいものない言葉や風景を山ほど書きとめられている。そのたくさんのイメージから作家の前を通過していくものを厳選し、引っかかったイメージを丁寧に思い出してモチーフとして作品を描いています。そこには、大げさなメッセージも使命感も無い。日々の事象を、絵を描くことによって消化してるかのようです。題材として取り上げる対象は、日常生活で誰もが目にするが、気には留めないようなものばかりです。消化され、排出される。おぼろげな記憶を辿りながら描く過程の中で、彼女のフィルターを通すことによって、モチーフそのもの以上の何かが付随してくる。彼女の絵を見て、引き込まれてしまうのは、モチーフが多くの人の中での共通認識としてあり、そこからは観賞者からの想起がはじまっているのです。